“ブラックジャック”
南淵明宏医師

本や映画などのメディアには自分の心の中の原石を磨く、あるいは心を開かせる力があると思う。特別な幼年時代をすごしていなくても、その心の原石にどういう刺激の与え方をするかで変わってくるんじゃないかと思う。感動する一瞬を自分にどれだけ与えられるか、それはひとつの力だと思う。今風の言葉でいうと「感動力」。自分を感動させるような何かをあえて意図して持つべきだと思う。自分で体験して自分で考え、自分で感じることが大切。それが「自分の知識」になる。





「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス―」
これは本当にすばらしい本。もう10回くらい読んでいる。「ひろい宇宙空間において、人類と同じ生命体がいる星はいくつあるか」という問いに対して、物理学、生物学などありとあらゆる科学の分野から合理的に推論して、最終的に「結局人類しかいないだろう」という結論を導き出す。ひとつのことを突き詰めるのに、さまざまな手段を使う、まず疑ってみて、それから考えを進めていくという、知的な考察方法がわかる。これは科学啓蒙書としてぜひ高校生のレベルで読んでほしい。逆に、この本に書かれていることが科学のすべてといってもよい。

「国盗り物語」
この本をはじめとして、学生時代はよく司馬遼太郎を読んでいた。手塚治虫もそうだが、司馬遼太郎の描く主人公というのは基本的に俗物で、性格がいびつで、欲が強い。自意識過剰で、わがままで、よく言えば自分の信念を、悪く言えば自分の欲望を叶え
るために突き進んでいく。俗物が世の中を動かしている。その登場人物の「かっこ悪さをものともしない」というのが魅力的だった。18、19の若いころというのは、自分の人生を壮大に思い描くときだと思うので、そういうときにこそぜひ読んでほしい本である。

「三国志」
これは人間として、絶対読まなくてはならない!登場人物それぞれの魅力ももちろんだが、ひとつのテクストとして、いろいろな話の原点が三国志にはある。日本のいろいろな話の原点が「伊勢物語」にあるように。日本でいうと、「万葉集」の歌から人の気持ちを慮るということを学ぶのもよいと思う。



あとは映画も大好きで、「野いちご」「汚れなき悪戯」「禁じられた遊び」などは何度も繰り返し見ている。ただ、僕は決して人よりたくさん映画を観ているわけではない。先ほども言ったように、人より「感動する力」が強いのだと思う。他の人が素通りしていくところを拾っていて、結果的にそれが自分の引き出しになっている。いろんな衝撃を受けることで、自分の原点となるものができていく。それは入試を突破するためにも、医師となってからも必要なものだと思う。大学で「患者の立場に立って・・・」などと教わったところで、何がわかるというのか。医学生も、勉強が忙しいから本も読めない、などと言っていてはいけない。どんどん本や映画に触れ、衝撃を受けて、感性を磨いていってほしい。

南淵明宏医師プロフィール:
1958年(昭和33年)大阪生まれ。83年奈良県立医科大学卒業。85年国立循環器センターレジデント、89年シドニーセント・ビンセント病院フェロー、91年国立シンガポール大学、92年新東京病院などを経て、96年(平成8年)6月医療法人公仁会大和成和病院(神奈川県大和市)に心臓外科を開設。現在同病院院長。専門は虚血性心疾患の外科治療(心拍動下冠状動脈バイパス手術)。日本胸部外科学会認定医、医学博士。







////////