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医師の本棚

”平成の赤ひげ” 鎌田實医師の本棚

● プロフィール
JFC:日本チェルノブイリ連帯基金、JIM-NET:日本イラクメディカルネットワークを通して、ロシアとイラクの恵まれない子どもたちの支援を行っている。また、『がんばらない』というレコードレーベルを作り、子どもたちに送る薬の資金源にしている。第1弾として「ひまわり」、第2弾として「おむすび」というCDを製作し販売中である。

『メメント・モリ』 藤原新也(情報センター出版局)

この本の写真を初めて見た時は衝撃を受けた。人間の死体を2匹の野良犬が食っている。そんな写真を見て君たちはどう思うだろうか。凄惨な、あるいは残酷な印象を受けるだろう。
しかし、その写真の下にたった1行、言葉がある。「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ。」病院で薬漬けになって、何本も管を刺されたまま死ぬことを想うと、死というものは多様でよいのではないかと思う。そしてそれは同時に生の多様化を認めることにもなるのだ。

『カラマーゾフの兄弟(上・中・下)』 ドストエフスキー(新潮文庫)

18歳の時に初めて読んだ。その後何度も読み返している。物語の最初の方は理屈が多く難渋な部分もあるので、本を読み慣れていない人は、下巻だけを読むのもよいだろう。また、最近新訳が出たのでそれなら読みやすいはず。
この本を読んで感じることは、人間は誰でも心の中にケダモノを飼っていて、それを暴れさせないように大人達が色々な仕掛け ---- 教育であったり、宗教であったり ----- を作っているってこと。この本には人間のあらゆる本姓が描かれており、それをコントールすることの意味とその難しさが見事に表現されている。

『だいじょうぶ だいじょうぶ』 いとうひろし(講談社)

これは絵本なのだけど、柳田邦夫が言うように絵本には力がある。それは恐らく先に述べた“隙間”の持つ力であろう。
どれだけ多くの患者が、「だいじょうぶ」と言ってもらい救われているか。この「だいじょうぶ」という言葉にも不思議な力がある。患者は共感してもらうと心を開く。医療者として患者の心を開き、患者を支えていかねばならない。

『田村隆一全詩集』 田村隆一(思想社)

詩も音楽も同じだが、多くの”隙間”を持つ素材として、想像力を養うには有効な媒体である。中には解釈の難しいものもあるが自分流に読めればいいんじゃないか。好きな詩の2つや3つは持っておきたい。

『どくとるマンボウ航海記』他 北杜夫(新潮文庫)

父である斎藤茂吉は医師でもあり、北杜夫自身もそして兄も医師という医家の出である。
彼の作品は大きく2種類に分類されると思うが、シリアスな『楡家の人々』や『夜と霧の隅で』などもよいが、軽いタッチで、好奇心をくすぐる『どくとるマンボウ』シリーズが好きだ。医師も科学者も多くは好奇心によって新しい知識や考え方を 身につけていくのだ。

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